Gemini CLI vs Claude vs GitHub Copilot CLI

この記事は、2025年6月25日深夜に正式ローンチされたGemini CLIに、CLI系ツールの比較記事を書かせてみました。
私の私見的な補足も少し書き加えておきます。


プログラミングの効率を飛躍的に向上させるAIコーディング支援ツールが、今や開発現場に欠かせない存在となりつつあります。

特に、ターミナル上で対話的に操作できるCLI(コマンドラインインターフェース)ツールは、多くの開発者のワークフローにシームレスに統合され、その生産性を高めています。

本記事では、主要なAIコディング支援CLIツールである「Gemini CLI」「Claude」、そして「GitHub Copilot CLI」の3つを取り上げ、それぞれの機能、特徴、料金体系、性能などを多角的に比較・解説します。


各ツールの概要とアーキテクチャ

まず、各ツールの基本的な特徴と設計思想を理解しましょう。

1. Gemini CLI:GoogleのマルチモーダルAIを活用した対話型エージェント

Googleが開発した「Gemini」は、テキスト、画像、コードなど多様な情報を統合的に処理できるマルチモーダルAIです。Gemini CLIは、この能力をコマンドライン上で最大限に活用することを目指しています。

最大の特徴は、単なるコード生成に留まらず、**ファイル操作やコマンド実行といったローカル環境での実作業を伴う対話型エージェントとして機能する**点です。ユーザーの指示に基づき、ファイルの読み書き、テストの実行、git操作などを自律的に行おうとします。その際、必ず実行前にユーザーにコマンドの内容を提示し、許可を求める「安全性」を重視した設計が採用されています。

2. Claude:長文コンテキストの読解力に優れたAIアシスタント

Anthropic社が開発した「Claude」は、特に 長大なコンテキスト(プロンプト)の処理能力 に定評があります。一度に数十万トークン(一般的な書籍1冊分に相当)を読み込むことができ、大規模なコードベース全体の文脈を理解した上での回答生成を得意とします。

CLIツールとしてのClaudeは、この読解力を活かし、プロジェクト全体のコードを分析したり、複数のファイルにまたがる複雑なリファクタリングを提案したりするタスクで真価を発揮します。コードの意図や設計思想を深く理解し、一貫性のある高品質な出力を提供することに重点を置いています。

3. GitHub Copilot CLI:開発ワークフローに密着した高速アシスタント

GitHub Copilotは、今や最も広く使われているAIコーディング支援ツールのひとつです。Copilot CLIは、その強力な機能をコマンドラインの世界に拡張したものです。

「開発者の思考を先読みし、コーディングを加速させる」という思想に基づき、
自然言語でやりたいことを記述するだけで、対応するシェルコマンドやgitコマンドを即座に提案する機能が非常に強力です。エディタ上のCopilotがコード補完の達人なら、CLI版はターミナル操作の達人と言えるでしょう。


機能と性能の比較分析

次に、具体的な項目で3つのツールを比較します。

比較表

分析①:料金とコストパフォーマンス


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GitHub Copilot は、学生であれば無料で利用できる「GitHub Student Developer Pack」に含まれており、コストパフォーマンスが極めて高いです。
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Claude は一定の無料枠を提供しており、個人開発や小規模な利用であれば無料で試すことができます。
※ Claudeの無料リクエストは数回のラリーで終わってしまうため無料版での評価は難しいです
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Gemini は現在プレビュー段階の機能も多いですが、将来的にはGoogle Cloudのクレジットなどを活用した柔軟な支払いが可能になると考えられます。
※ Gemini CLIはプレビュー期間中は 60リクエスト/分 1,000リクエスト/日 まで無料

分析②:速度とインタラクション

- 速度を最優先するなら**Copilot CLI**が最適です。コマンドの提案はほぼ瞬時に行われます。
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Gemini CLI は、ユーザーとの対話を通じて安全性を確保する設計のため、一連のタスク完了までには時間を要します。
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Claude は、大量の情報を読み込んでから回答を生成するため、思考時間は他に比べて長くなる可能性がありますが、その分、質の高い回答が期待できます。

分析③:コードの品質と信頼性

- Gemini CLI は、既存のコードベースのスタイルや規約を分析し、それに倣ったコードを生成するため、**一貫性**の面で優れています。
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Claude は、その高い言語能力から、コメントを含めた**可読性**の高いコードを生成する傾向があります。
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Copilot は、膨大な学習データから最も一般的(ポピュラー)なコードを生成しますが、必ずしもそれがプロジェクトの文脈に最適とは限らないため、ユーザーによるレビューが重要です。


ユースケース別推奨ツール

どのような場面でどのツールを選ぶべきか、具体的なユースケースを基に提案します。

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新しいプロジェクトで、定型的なコマンドを素早く実行したい場合
* ➡️ **GitHub Copilot CLI**:`git`の操作や`npm`スクリプトの実行など、日常的なコマンド操作を効率化します。

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既存の大規模なコードベースをリファクタリングしたい場合
* ➡️ **Claude**:プロジェクト全体のファイルを読み込ませ、一貫性を保った修正案を考えさせるといったタスクで能力を発揮します。

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テストの実行やファイルの移動など、コード変更とファイル操作を連携させたい場合
* ➡️ **Gemini CLI**:「この関数を修正して、関連するテストを実行して」といった、一連のワークフローを自動化するのに最適です。


まとめ

Gemini CLI、Claude、GitHub Copilot CLIは、それぞれ異なる強みと設計思想を持つ、個性的なツールです。

- **Gemini CLI**は、安全性を重視した**「対話型エージェント」**
- **Claude**は、深い理解力を持つ**「熟考するアナリスト」**
- **GitHub Copilot CLI**は、生産性を最大化する**「高速なアシスタント」**

と特徴づけることができるでしょう。

単一のツールに固執するのではなく、それぞれの特性を理解し、目の前のタスクや目的に応じてこれらを使い分けることが、AI時代の開発者にとって重要なスキルとなります。ぜひ、ご自身の環境でそれぞれのツールを試し、その能力を体感してみてください。